中国でも絶大な人気を誇る井上雄彦さん(56)のバスケットボール漫画「SLAM DUNK」(スラムダンク)。映画「THE FIRST SLAM DUNK」が中国で4月20日に公開され「中国の海外アニメーション映画の前売り券の歴代記録を塗り替えた」(人民日報日本語版)。

ところが、井上さんが中国語でメッセージを発信したところ、一部の中国の民族主義者たちが「上映を止めろ!」「観る奴はバカだ!」と大騒ぎを始めた。井上さんのTwitterにも多数の批判が書き込まれている。イラストの「CHINA」のHだけ黄色く描かれていて「CINA」(シナ)と読める。中国に対する侮辱なのだという。しかしこれは表向きのもの。どんないちゃもんを付けてでも、井上さん批判が出るのは決まっていたようだ。

「CHINA」の「H」だけ黄色?

井上さんは4月20日、中国での公開に合わせ中国語でメッセージを送った。

「中国的朋友们,你们好吗? 感谢大家一直以来的支持。《电影灌篮高手》今天起在中国上映了,我感到非常的高兴! 对创作者来说,制作出一个全新的作品,既是一种挑战也是一种喜悦。 希望这个“第一次的灌篮高手”可以让大家也乐在其中」

(中国の友達、元気? 今後ともよろしくお願いいたします。『映画 スラムダンク』が本日中国で公開され、とても嬉しいです!クリエイターにとって、新作を制作することは挑戦であり喜びでもあります。この『初めてのスラムダンク』を皆様に楽しんでいただければ幸いです:Twitter翻訳より)

このメッセージと共に、簡単なアニメ映像を添付。宮城リョータのイラスト上に、「HELLO CHINA」と記した。「H」だけ黄色だった。全体で見ると、中国国旗の色をイメージしている。そしてこれが中国の一部で大騒ぎに発展する。

「この馬鹿は香港独立の支持者だ」

中国のSNS「微博」を中心に上映中止を呼び掛ける運動が起こった。中国を侮辱するためにわざと「CHINA」を「CINA」に変えた、というもの。井上さんのTwitterには中国語で、

「あなたの母親に見せてください。それは明らかな侮辱です」

「へへへ、CHINAのHをわざと別の色に変えてしまったので、二度とSDを見に行きません!!!」

「cina、盲目の老人ですよね?」

「背景とh文字の色を見て感動するのはやめてください、それは中国を侮辱しているからです!」

「よく見ると中国のhの色が他と矛盾しています。これが何を意味するか分かりますか?この馬鹿は香港独立の支持者だ、この映画を見た者は誰でも馬鹿だ、家族全員を○した馬鹿だ」(○は「ころ」の漢字)

などが投稿された。ここでのポイントは「香港独立の支持者」。「スラムダンク」は中国で圧倒的人気があり、作者の井上さんもその名前は広く知られ、注目されてきた。そもそも「CINAに見える」は明らかな言掛り。「スラムダンク」公開に合わせ、井上さんバッシングが出る事は決まっていたと言える。

「スラダン」は見せしめに使われた

1999年に香港民主化デモが激烈化。自由主義国陣営、スポーツ関係者らが民主化を支持した。それを懸念した中国政府は弾圧を掛ける。10月4日、米プロバスケットボール(NBA)チーム幹部が民主化支持のツイートをした、と騒ぎが起きた。現地企業は次々とNBA関連のスポンサーから降りた。営中央テレビ(CCTV)もNBAの試合放映を中止した。NBAは謝罪に追い込まれる。その関連で出たのが「スラムダンク」だ。NBA、そして「スラムダンク」は中国で絶大な人気のため見せしめに使われた。井上さんの「容疑」は、というと首を傾げたくなるものだった。同年6月頃、香港デモを支持するとしていた河野太郎外相(当時)のツイートに、井上さんが「いいね」を押していた、というもの。SNS「微博」などで「芸術家が政治に口を挟むな!」との激しい批判が起こり、作品のボイコット運動まで起きる。「スラムダンク」イコール「香港独立支持者の井上」のイメージは民族主義者に深く刻まれている。

 

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(リンク)

井上雄彦さんのツイートとイラスト

https://twitter.com/CHNwallbreaker

/status/1648861500080046081