流通大手セブン&アイ・ホールディングスは2022年2月1日、株式会社西武、株式会社そごうの株式売却を含め、あらゆる可能性を排除せずに検討を行っていると発表し、百貨店事業の切り離しを検討していることを明確化した。売却額は2000億円規模とみられている。

スーパー経営者にとって百貨店は憧れ

セブン&アイは2006年にそごう、西武のミレニアムリテイリングを買収し西武池袋本店やそごう横浜店など百貨店10店舗を展開している。

「流通革命」と呼ばれた1980年代、百貨店は花形産業であり、スーパーマーケットを展開していたセブン&アイの前身、イトーヨーカ堂にとって憧れの存在だった。同社は1984年にアメリカのJ. W. ロビンソンと提携、株式会社ロビンソン・ジャパンを設立。埼玉県春日部市、栃木県宇都宮市などに「ロビンソン百貨店」を開店した。ところが、ステータスのある高級ブランドとの提携ができず、スーパーと百貨店の中間という中途半端な運営となり「スーパーが百貨店経営をするのは無理」などと烙印が押された。百貨店業界が斜陽になり統廃合が進む中、セブン&アイがミレニアムリテイリングを買収したのは、その憧れが続いていたため。「ロビンソン百貨店」は2007年にミレニアムリテイリングの傘下に置かれ「西武」名称となり消滅する。こうした経緯からセブン&アイには百貨店経営のノウハウがないとされていて、結果的に経営のテコ入れはできず、「百貨店を閉店させただけ」という悪評が立った。

2月中にも売却先の選定が始まる

コンビニのセブン―イレブン・ジャパンが利益の大半を稼ぐセブン&アイ。百貨店は不振脱却のめどが立たず、ミレニアムリテイリングは21年2月期決算で172億円の赤字というグループの重荷になっていた。そんなセブン&アイに対し、株主から百貨店事業やスーパーマーケット事業を切り離すよう圧力がかかった。セブン&アイは現在、複数の投資ファンドや事業会社への売却を検討していて、2月中にも選定を始める。セブン&アイは2月1日、

「一部報道において、当社が完全子会社である株式会社そごう・西武の株式売却を検討しているとの報道がございました。当社は、昨年7月に発表いたしました『中期経営計画2021-2025』にてお示ししたとおり、事業ポートフォリオに関して、株式会社そごう・西武の株式売却を含め、あらゆる可能性を排除せずに検討を行っておりますが、報道の内容につきましては、何も決まったものはございません」

と発表した。

 

(リンク)

セブン&アイ・ホールディングス「一部報道について」

https://www.7andi.com/company/news/release/202202010900.html