「ガラスの天井が突き抜けた」―――これだけを聞けば、ガラスの天井が破れてガラスの破片が下に降って来る。下にいる人たちは「危険だ!」という感じになる。ところが4年前の米大統領選でヒラリー・クリントン氏(73)が敗北宣言をした際の「ガラスの天井」に強い印象を持っている人たちにすれば、先の解釈は「間違い」だ。このコロナ禍、緊急事態宣言の中でその解釈を巡り脱力してしまいそうな論戦が続いている。

 

「は?と思いました。意味間違ってます」

 

2021年1月8日、デイリースポーツの電子版は吉村洋文大阪知事(45)の会見を報じた。大阪府も緊急事態宣言の発令を政府に呼びかける、というものだった。その理由は7日に感染者が初めて600人を超えたからであり、

「一つは560名の、一挙にガラスの天井が突き抜けた瞬間と、それが次の日も600名を超えると報告を受けたこと」

と吉村知事は語った。

これに噛み付いたのが立憲民主党の蓮舫議員(53)で、9日に自身のツイッターで、

「は?と思いました。『ガラスの天井』の意味間違ってます」

と呟いたことがネットで大きな話題になった。

 

「ガラスの天井」というのは一般的にガラスが使われている天井の事で、どこにでも存在する。一方、4年前の米大統領選でヒラリー・クリントン氏が使って有名になった言葉でもある。もともとは1978年にアメリカの企業コンサルタント、マリリン・ローデン氏の「glass ceiling」が最初とされ、資質や実績があっても女性やマイノリティが一定の職位以上に昇進できない企業や組織内の「障壁」を指す言葉だ。ヒラリー氏は初の女性大統領になれなかった悔しさをこれで表現した。

 

「いつ割れてもおかしくない状態を喩えただけ」

 

この記事が出た時、ネットの掲示板でも「言葉の使い方が間違っている」という指摘が多数出た。しかし、蓮舫議員が「は?」と呟いてからは「言いがかりだ」「揚げ足取りだ」「話のすり替えだ」といった蓮舫議員批判が出ることになった。そして、

「こんなつまらないことに労力を割くなら自分の仕事をやってください」

となり、騒ぎが収まるかに見えたが、10日に当の吉村知事が「参戦」してしまった。

 

吉村知事はツイッターで、蓮舫議員らが「吉村が間違って使ってる!」と一生懸命だ、とし、

「記者会見では、いつ割れてもおかしくない状態を『ガラス』に喩えただけ。会見の中身を見たら明らか」

女性の活躍促進は以前から進めていることだから言葉は分かっている。

「『ガラスの天井』を打ち破る政策には賛成」

と呟いたが、これが火に油を注ぐ形になった。

 

「相手しないほうがイイですよ」

 

Twitterでは、

「言えば言うほど、ものすごくカッコ悪いですよ」

「この発信で多くの人が不信感を抱いた事は事実であり、知事はそれを受け止めるべきです」

「『誤った使い方をして申し訳ない』と謝罪すればよいだけ」

という吉村知事批判が増えた。

そもそもは吉村知事が「参戦」しなければちょっとした騒ぎで終了していたはず。

「相手しないほうがイイですよ」

「黙ってたらいいのに、言い訳するから余計に突っ込まれるのわからないんでしょうか」

「いちいちめんどくさい議員のせいで吉村さんも大変ですね。。。かまってる暇ないくらい毎日激務なのに…。」

といったツイートがされている。

(リンク)

Hillary Clinton(ヒラリー・クリントン)公式Twitter

https://twitter.com/hillaryclinton

 

産経新聞「ヒラリーと『ガラスの壁』『ねばねばの床』という新視点 大阪編集局特別記者・石野伸子」

https://www.sankei.com/life/news/170108/lif1701080002-n1.html