プレジデントオンラインが2021年12月23日に配信した「ソマリアの海賊をあっという間に消滅させた”すしざんまい社長”の声かけ」が、事実と異なる内容だったとし、同サイトは24日に謝罪し記事を削除した。

「すしざんまい」を運営する喜代村の木村清社長が、ソマリア海賊の消滅に貢献したというのは有名な話で、社長本人もテレビ出演して語り、同社HPにも詳しい説明がある。ところがこの話、記事になると勇ましく「盛って」書いてしまう傾向があるようだ。

海賊襲撃被害は2014年からパタッと消滅

プレジデントオンラインの記事にはこんなことが書かれていた。ソマリア沖はキハダマグロが獲れる良い漁場だが海賊が出て漁がしにくくなっていた。そこで木村社長は、海賊にマグロ漁をさせ生活基盤を安定させれば海賊から足を洗える、と考えソマリアに行き、海賊と情報交換をした。そして船を4隻与え、漁の仕方を教え、冷凍倉庫や流通設備を整えた。すると、

「年間に300件以上も発生していた海賊襲撃被害は2014年以降からパタッと消滅した」

と書いた。さらに、この話は権威あるビジネス誌「ハーバード・ビジネス・レビュー」でも紹介されたとした。同サイトは24日、内容が事実と異なっていると謝罪し、同記事の削除を発表した。さらに、

「本件が『ハーバード・ビジネス・レビュー』に掲載された事実はなく、内容はフェイクと思われます。掲載前の事実確認が疎かでした」

とした。このハーバード・ビジネス・レビュー」を見てピンと来た人もいる。掲載されたのはここにではなく、扶桑社のニュースサイト「ハーバー・ビジネス・オンライン」。ここで扱った木村社長の記事もフェイクだと騒ぎになった。

木村社長の尽力で海賊がゼロになった印象

それが2016年1月18日配信の木村社長のインタビュー記事で、「『すしざんまいが年間300件の海賊被害をゼロに」という見出しが付いている。木村社長は、

「ソマリア沖じゃ一時は年間300件、海賊による被害があったそうですが、うちが行くようになって、この3年間の海賊の被害はゼロだと聞いています。よくやってくれたと、ジブチ政府から勲章までいただきました」

と語ったというもの。このインタビューがフェイクとされたのは、まるで木村社長の尽力によって海賊がゼロになったかのような印象を与えること。実際は国連や先進各国、そしてボランティアの努力が背景にあり、そもそも木村社長が出て行った頃には海賊被害は減少していた。そして、現場で海賊被害を抑えるために頑張った人たちに失礼だ、とNOP団体関係者が主となってフェイクを主張。今回、先の「プレジデント」の記事は、「ハーバー・ビジネス・オンライン」の焼き直しだとの批判も出た。

海賊が暮らしていけるための手助けをした

「すしざんまい」のHPには、「ソマリア海賊の話ってホント!?」というQ&Aがある。そこにはこんな回答が出ている。

「本当です。漁業を通して海賊にならなくて済む方法を教えました。ソマリアで海賊を撲滅した、という話が広まっていますが、正しくは現地で海賊が生まれる原因をなくし、海賊をしていた彼らが今後暮らしていくための手助けをしました」

と書かれている。木村社長の航空自衛隊入隊経歴が有名だからか、ピント外れの勇ましく「盛った」記事が出来上がる。あくまでソマリア海賊の話しは、木村社長のビジネス理念を示し、実行したものであって、平和のために戦った、というものではないのだ。

 

(リンク)

「プレジデントオンライン」星野貴彦編集長の謝罪tweet

https://twitter.com/ho4not/status/1474221982338383873

 

すしざんまいHP「ソマリア海賊の話ってホント!?」

https://www.kiyomura.co.jp/tuna-king/legend

 

扶桑社「ハーバー・ビジネス・オンライン」

すしざんまい社長が語る「築地市場移転問題」と「ソマリア海賊問題」

https://hbol.jp/pc/77365/