熱中症で病院に搬送される中学生、高校生のニュースが相次いでいる。マスクをしたまま体育大会に参加していたからだ。
文部科学省は2022年5月24日、「体育の授業では、屋外運動場に限らず、プールや体育館も含めてマスクは必要ない」と発表。各学校に通知した。ところがそれは、マスクを外すことへのブレーキになっていた事がわかった。昨年2月マスクを着用した男子小学生が持久走で死亡。この教訓から「体育の授業等でマスクの着用は必要ない」と文部科学省は通達した。ところがマスク着用が徹底される結果に。それと同じことが繰り返されている。
マスクを外せとは指導していなかった
6月2日、大阪市の私立「大阪女学院中学・高校」の体育大会中に、熱中症の症状を訴えた女子生徒29人と保護者の女性1人の計30人が病院に搬送された。うち中学3年の生徒1人が重症という。報道によれば、生徒に「マスクは外していい」と伝えたものの、玉入れや綱引きなどは、マスク着用を推奨。観覧中でも多いときで4割程度の生徒らが着用していた。3日には兵庫県尼崎市の私立「立花中学校」で体育大会の練習中、22人の生徒が熱中症とみられる症状で病院に搬送された。ほぼ全員がマスクを着用していた。同校は、
「十分な間隔を確保できないため、マスクを外すように指導していなかった」
としている。実はこれ、体育の授業でマスクを外すことへのブレーキとなる、文科省が出した基準が影響している。
詳細に示されたマスク外しの規準
実は昨年、文科省は同じように「体育の授業等でマスクの着用は必要ない」と通知している。大阪の小学校で2月、男子生徒が体育授業の持久走でマスクを着用し、亡くなったからだ。ところが通知以降、マスク着用が強化されるという結果になった。埼玉県越谷市の立西方小学校、尾板直樹校長は6月30日の「学校だより」で、地域の人からこんな質問を受けた、と明かした。
「校庭での体育の授業を見たら、子供たちがみんなマスクをしていました。文部科学省が『体育の時間はマスクをしなくてよい』と言っているのに、なぜマスクをしているんですか?」
これについて尾板校長は、マスクを外すためには「感染を避けるために2m以上の間隔をとる」など様々な基準があり、これを達成するのは非常に困難なこと、との理由を述べた。さらに、こうした規準から、昨年度までは熱中症予防のため「休み時間の外遊びはマスク不要」としていたが、今年度からは「外遊びの場合もマスク着用」になった、と説明。つまり、マスクは外していいが、外すためのハードルが高くなった(もしくは、詳細に示された)ということ。尾板校長は、「コロナ」と「熱中症」両方の対応を同時に進めなければならない、とした。
文科省発表の「マスク外し」規準はトンデモ
今年5月24日の「体育の授業では、屋外運動場に限らず、プールや体育館も含めてマスクは必要ない」という文科省の通達も、マスクを外す規準は昨年のものより強化された感すらある。 マスクを外すためには、
「地域の感染状況等を踏まえつつ、児童生徒の間隔を十分に確保する」
さらに、運動でいえば、部活動でのマスクを外す規準だ。まず、「感染対策を徹底することが必要です」とし、
「練習場所や部室、更衣室、ロッカールーム等の共有エリ アの利用時」
大会等の参加に当たっては、マスク着用はトンデモなほど徹底している。、
「大会中はもとより、会場への移動時や会食・宿 泊時、会場での更衣室や控え室、休憩スペース、会議室、洗面所等の利用時、 開会式、抽選会、表彰式等の出席時、応援時」
いつマスクを外したらいいのか分からない。それだけでなく、いつでもどこでもマスク着用のようにも捉えられる。
一方で、マスクを外したがらない子供が多いのだという。マスクが日常化し、顔を見せるのが恥ずかしい、外すと周りの目が怖い、ということもあるそうだ。また、
「子どもから見れば、『外せと言っている先生が、着けているじゃないか』と思うのは当たり前です」
「親が過敏になっていて、マスクを外せと言うものなら、学校に苦情を言うモンスターペアレントが湧いて出る」
という書き込みも掲示板に出ている。もし子供にマスクを外させたいと思うなら、
「強制的に外させるような政府からの指示がなければ無理」
と考えている人もいる。
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埼玉県越谷市立西方小学校「学校だより」
https://school.city.koshigaya.saitama.j
p/nishikata_e/attach/get2/583/0
文部科学省「学校生活における児童生徒等のマスクの着用について」