「バスの運転手が客待ちをしている間に運転席で漫画を読んでいた」。そんな告発が証拠の写真付きでTwitterに出た。しかし、批判を受けたのはこの運転手ではなくこれをtweetした「petbottler」さんだった。クレーマー扱いされツイートが「炎上」。アカウント削除に追い込まれた。「休憩中に漫画を読むのがなぜ悪い!」というものだが、何が正しいのだろうか?

 

「運転中じゃなくても勤務中だろ」

 

「petbottler」さんは2021年3月12日にこうツイートした

「数日前の阪急バス。始発停留所で客待ちの間、漫画呼んでる運転手。運転中じゃなくても勤務中だろ。客の乗車に注意してなければならないはずだ」(原文ママ)

これに対し運転手は悪くなく、悪いのは盗撮をしてSNSで公開した「クレーマー」「正義マン」の「petbottler」さんだ、と批判が起きた。そうした批判の根拠になっているのがこのtweetだ。

「バス運転手の場合、起終点での発車までの折返し待ち時間の多くは、労働条件としては休憩時間=賃金支払い対象外であることが多い、という事情を理解されていない方が多いのだなあ、と改めて思います。 起終点できちんと休憩できないと、安全運転に差し障りかねないのですけどね、、」

本当なのだろうか。

 

拘束時間(勤務時間)には「休憩」も含まれる

 

厚生労働省の委託事業として日通総合研究所が出した、

「平成30年度 バス運転者の労働時間等の改善のための基準 応用編」

によれば、バスの運転手は4 時間に対して合計 30 分以上の休憩を取る。休憩等を分割する場合は1回を10分以上とする、となっている。また、運転手の拘束時間は「法定労働時間」+「時間外労働」+「休憩」だ。拘束時間とは、始業から終業までの使用者(会社など)の監督下にある時間である。つまり、「休憩」も使用者の監督下にある。

阪急バスの運転手とされる人物の漫画を読む行為はどうなのか。この資料を委託した厚労省に問い合わせると、「労働局」に聞いて欲しい、ということだった。

 

NNJニュースは15日、東京労働局のバス担当者に取材したところ、資料に書かれているように、市バスなどを含め各会社ごとに運転手は勤務時間(拘束時間)が決まっていて、勤務時間内であれば休憩も「勤務」(拘束)に当たるとした。休憩の取り方は労働基準法に基づいたそれぞれの会社の規定がある。一般的な話として、休憩で運転手がバスに乗車し運転席で漫画を読むということは聞いたことがなく、始発や折り返し地点で乗客待ちをしている場合は「休憩には当たらないはずだ」、とした。

 

「同様のケース発生で教育・指導いたします」

 

NNJニュースが阪急バスに対し①この写真は事実なのか②始発や折り返し地点で運転手は休憩を取るのか、などを取材したところ、17日にメールで返答があった。そこには、

「今回お問い合わせいただいた件につきまして、今回のツイートおよび写真のみでは撮影日時や場所を特定できず、事実関係を確認できておりません。状況にもより一概には言えませんが、終点での折り返し時間は待機時間であり、今後同様のケースが発生した場合には教育・指導いたします」(阪急バス株式会社経営企画部)

ということだった。つまり、乗客待ち時間は休憩時間ではない。また、勤務時間(拘束時間)内に仕事とは無関係な漫画などを読んではいけない、という結論である。

 

(リンク)

阪急バス公式HP

https://www.hankyubus.co.jp/

厚生労働省「平成30年度 バス運転者の労働時間等の改善のための基準 応用編」

https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/000510309.pdf

厚生労働省YouTubeチャンネル(応用編)バス運転者の労働時間等の改善のための基準

https://www.youtube.com/watch?v=SrdH1ZyahEY