テレビドラマ、アニメ、実写映画化もされた大ヒット漫画「のだめカンタービレ」。コミックの新装版が発売されるなか、作者の二ノ宮知子さん(52)が、一部の描写を修正していることを明かした。
世界的な指揮者として描かれているシュトレーゼマン(ミルヒー)のセクハラをマイルドにしたものだが、「作者は過去の読者を裏切っていいのか?」というツッコミが出ている。
新装版はミルフィーが背後から抱きつく
「のだめカンタービレ」はピアノの天才的センスを持つ野田恵(のだめ)と、指揮者を目指す千秋真一がクラシック音楽の世界で奮闘するラブコメディ。講談社の女性漫画誌「Kiss」に2001年から2010年にかけ連載された。作者の二ノ宮さんはTwitterで2022年2月23日、読者のtweetと写真を引用し、
「ふふふ。地味に色々、変わっているのですよ」
と投稿した。写真に映っていたのは、ミルヒーが、のだめの胸を背後から触るシーン。新装版では背後から抱きつく様子に変わっている。ミルヒーは超が付くほどの女性好き、セクハラオヤジとして描かれている。抱きついた後のコマは、「ぎゃぼー!!」「バキイ、ドゴー」とボコボコにされる音があり、「ミルヒー!?」と容体を心配する。胸を触るのも、抱きつくのも、次のコマは同じだ。
「昭和のギャグ漫画のノリ」がダメ
二ノ宮さんはこうした変更について、
「久々に見たら、自分が引いたので、ちょっと直しましたよ。今のわたしのの感覚で同等かな」
と説明。コンプライアンスに配慮したものではなく、あくまで自分の感性で変更したとした。
実は二ノ宮さん、2021年10月26日配信のエンタメサイト「Real Sound」で新装版に関するインタビューを受けている。連載開始から20年、当時は「昭和のギャグ漫画のノリ」が冗談として受け止められると思っていた。ところが現在は、それによってショックを受ける若い読者がいたらイヤだなと思っている。昭和の時代を生きた自分でも「おかしい」と思うぐらいにはなっていて、
「時代と共に漫画の表現というのは変わっていくんだなって思いますね」
それで新装版1巻の後書きに「本当に殴っているわけじゃないよ」という注意書きを入れたという。ただし、このインタビューには描写を修正する話しは無かった。
自分が描いたものを自分で壊している
今回の二ノ宮さんのTwitterで一部描写を変更したことが分かり、ネットではミルヒーのセクハラは連載当時から嫌いだった、修正するのは大切なこと、作品としてブラッシュアップされている、といった賞賛の声が多数なのだが、首を捻っている人もいる。
「自分が描いたものを自分で壊している」
というのだ。例えば胸を触るというショッキングなセクハラだからこそ、次のコマの「ぎゃぼー!!」「バキイ、ドゴー」が生きる。後ろから抱きつかれてこんな反応になるの?という疑問だ。また、「昭和のギャグ」を修正するのなら、その部分が多すぎてキリがない。二ノ宮さんの漫画の魅力はゲスキャラ、セクハラボケ、暴力ツッコミであり、それを否定するなら二ノ宮さんの漫画ではない、と心配する人もいる。そもそも、漫画はその時代に生み出され、読者もその時代の思い出と共に生きている。現状に合わせて修正することは、
「作者は過去の読者を裏切っていいのか?という問題ではある」
「過去の表現を変えるのは作者といえど、なんだかなと思うけどね」
「これは悪しき例になると思う…一人の判断でやっていいことじゃない気がするよ」
といった意見も掲示板に出ている。
(リンク)
二ノ宮知子公式Twitter