国内のオーケストラがチャイコフスキーの序曲「1812年」の演奏取りやめの動きが出ている。ロシアのウクライナへの侵攻が原因。ネットの一部にはチャイコフスキーがロシア人だという差別だ、侵略による領土を拡大なら西洋クラシックも禁止にすべき、といった意見も出ているが、事情が異なるようだ。
世情を踏まえて演奏中止となりました
明石フィルハーモニー管弦楽団は2022年3月1日にTwitterで「お詫び」の告知をした。21日開催予定の第30回定期演奏会で、チャイコフスキー/序曲「1812年」を演奏する予定だった。しかし、
「現在の世情を踏まえて演奏中止となりました。楽しみにしていただいていたお客様には大変申し訳ありませんがご理解の程、よろしくお願いいたします」
とした。団内でも「作品に罪はない」「今回の侵攻とは曲の背景が真逆」だと演奏中止に反対する声も出たが、「今の状況では演奏するのは抵抗がある」という声の方が多く、中止が決まったという。
それなら欧米クラシックは全て禁止?
ネットでは、
「チャイコフスキーがロシア人だという理由で演奏中止。それなら欧米クラシックは全て禁止にしましょう。欧米諸国も侵略によって領土を拡大させてきたのだから」
「これを日本では『坊主憎けりゃ袈裟まで憎い』と言います。優れた芸術を締め出す理由がわからない」
「帝政ロシア時代だからカンケーねーだろ今のロシアとは違う」
「戦時中、ピアノを弾いていたら『敵国の音楽を演奏してけしからん!』と云われたので『これは同盟国ドイツの作曲家ベートーヴェンの曲です』といちいち言い訳していた。この話は、そういう流れに繋がり悲しい」
などといった意見が出て炎上気味になった。
しかし、「1812年」はロシアが、ナポレオン率いるフランス軍の侵攻を撃退、それを讃えた曲。曲中に「大砲」が鳴り響くなど「現在の世情を踏まえれば」相応しくないと考える人は多いのだ。
中部フィルは「くるみ割り人形」を追加
そもそもチャイコフスキーがロシア人だから演奏が中止になった、というのが誤解の始まり。スポーツ界がロシア選手を競技から締め出していることも影響している。中部フィルハーモニー交響楽団も「1812年」の演奏を中止する。理由は先の明石フィルと同じだ。愛知県小牧市で3月26日に行うコンサートでフィナーレに演奏する予定だった。3月2日に発表した。代わりに演奏するのは、帝政ロシアの圧政に苦しむフィンランド国民の自由と独立を表現した交響詩「フィンランディア」。フィンランドの作曲家シベリウスの作品だ。そして追加曲も発表されている。それはチャイコフスキーのバレエ音楽「くるみ割り人形」の「トレパック」。ロシア人だからチャイコフスキーの曲は演奏できない、というわけではないのだ。
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(リンク)
明石フィルハーモニー管弦楽団公式Twitter「お詫び」
https://twitter.com/tac0phi1_akash
中部フィルハーモニー交響楽団公式HP「曲目の一部変更のお知らせ」