チリの海水温度が高いからチリの養殖サーモンは抗生物質、抗菌剤だらけーーーそんな食養生研究家のツイートが「炎上」している。チリは南米の国ではあるが、養殖場は南極に近いため水温が高いということは無い。

チリはサケ、マスの養殖生産量が世界第2位。実は日本のJICA(国際協力機構)を中心とした組織が1970年から20年をかけ、養殖技術の供与と現場での指導によりチリの一大産業に育て上げた。日本の品質管理は厳格で「抗生物質、抗菌剤だらけ」などということは無い。ところが、チリの養殖に対し、こうしたデマが繰り返されているのだ。

「水温が高く養殖に適さず薬物が投与される」?

「不自然なチリ産のサーモン 南米にあるチリの海水の温度は高く、本来寒冷地出身の鮭が育つには高すぎます。そんな高い水温で養殖すると病気が発生するため、様々な抗生物質や抗菌剤などが餌に混ぜられて与えられています」

との呟きが2021年6月28日、Twitter「清水みちこ@食と心で健康な毎日へ」に出た。清水みちこさんは食養生、メンタルデトックス講座の講師で、清水さんの会社「No.8 GooD」は食を通じた体質改善をテーマに、料理代行サービス、宿泊体験サービス、健康相談サービスを行っている。このtweetに対し、

「南米大陸の太平洋側は南極海から北に流れるペルー海流(別名フンボルト海流)が流れているのでかなり北の方まで水温は低いですよ」

「サーモン養殖はチリの代表的な産業です。ASC認証をとっているサーモンはたくさんありますし、まず養殖魚の餌に抗生物質など入れたりしません。よく知りもしないで不安を煽るようなことを言うのはやめてください」

「出荷前にちゃんとして無投薬期間を設けて『薬抜き』がされてるんだよ」???? そんなこと『スーパーの食肉』にも書いてあるよ 俺は養殖だから『当たり前だ』って書いてるし」

といったことが書きこまれ「炎上」した。

またこんなツイートもある。

「なんで間違った情報流して平然としていられるのでしょうか?」

に対し、

「間違いに気が付かないのか、または思うところがあるのか?わかりません」

とサーモン養殖職人の「salmo」さんは答えている。

チリだけではなく世界の養殖が標的になっている

チリのサーモンが薬漬けで危険、というデマは今回が初めてではない。直近では2018年、チリの養殖で大量の抗生物質が使われているため、抗生物質に耐性を持つ細菌「スーパーバグ」が生み出される温床になりかねない。チリの地元の人は食べないし、アメリカではチリ産の排除を始めている、との世界的デマが流れた。どうしてチリ産は標的にされるのか。NNJニュースは6月30日、さけます類の個体群維持・管理の研究をしている国立研究開発法人水産研究・教育機構 北海道区水産研究所に話を聞いてみた。同研究所広報はまず、チリの養殖場は南極に近いため水温は低い、とした。さらに、「チリだけではないですよ」と意外な事実を語った。

「チリの養殖だけ何度もやり玉に上がるように見えますが、背景にあるのは『養殖は悪だから絶対に許さない』という『思想』的なものですね。だから世界的に他の種類の養殖も同じような目にあっているんです。そうした人たちは、いわゆる天然志向、ナチュラル志向。天然ものしか認めないわけです。過去のデマ記事がネットで今も読めますし、『養殖は悪』と思ってなくてもウィルスなど社会が不安になっている時に、そういう記事を読んで感化される人も出て来ます。その繰り返しだと思います」

と説明した。

 

(リンク)

Twitter「清水みちこ@食と心で健康な毎日へ」

https://twitter.com/michiko_no8/status/1409502588383350785

 

Twitter「salmo@サーモン養殖」

https://twitter.com/salmon_breeder/status/1409709977355264015

 

国立研究開発法人水産研究・教育機構 北海道区水産研究所HP

http://salmon.fra.affrc.go.jp/zousyoku/sakemasu.html