DHCテレビの報道バラエティー番組「ニュース女子」で名誉を傷つけられたとして、市民団体「のりこえねっと」共同代表の辛淑玉(シン スゴ、62)さんが同社などに1100万円の損害賠償を求めた訴訟で、東京地裁は2021年9月1日、同社に550万円の支払いと謝罪文の掲載を命じた。
ところが、元となった沖縄県の米軍ヘリパッド建設反対運動を扱った放送分は「削除する必要がない」という判決だった。同社の山田晃社長は9月1日放送の「虎ノ門ニュース」で映像制作に携わる者として今回の判決は「まぁまぁ勝訴」とし、完全勝訴に向けて控訴すると語った。
原告は1100万円の賠償金、謝罪、動画の削除を要求
今回の裁判は、2017年1月2日放送の同番組第91回「沖縄・高江ヘリパッド問題の『いま』」に関してのもの。MXテレビなど全国で放送された。沖縄のヘリパッド建設工事の激しい反対運動を取り上げ、反対しているのは中国人、韓国人が目立ち、沖縄県民は蚊帳の外、活動している人には報酬が支払われている、などといったことが現地リポートされた。そこに出てきたのが「のりこえねっと」。辛さんはまず、BPO放送人権委員会へ申立書を提出。事実に基づかない内容であり、在日に対するヘイトスピーチだとした。BPOは「重大な放送倫理違反」との結論を出し、これをきっかけに「ニュース女子」の地上波放送は無くなって行く。一方、制作したDHCテレビは「報道内容は事実」と譲らなかった。辛さんは2018年7月31日、
「犯罪行為も嫌わぬ過激な集団の活動をあおり経済的に支援する人、と報道され社会的な評価を低下させた。番組内容は名誉棄損に当たる」
として、DHCテレビと、当時は東京新聞論説副主幹だった司会の長谷川幸洋さん(68)を東京地裁に提訴した。辛さんが求めたのは1100万円の賠償金と、謝罪、そして動画の削除だった。
須田「あの放送で名誉棄損が成立していない?」
9月1日放送の「虎ノ門ニュース」では放送時間を延長し、判決が出るのを待っていた。午前11時頃に裁判所から出てきた山田社長は、カメラに向かって「不当判決」と書いた紙を出した。550万円の賠償金と謝罪文の掲載を命じられたからだ。一方で、長谷川さんに対する裁判は棄却された。長谷川さんは司会をしていただけで、番組制作関わっておらず、コメントもしていなかった。今回の「虎ノ門ニュース」に長谷川さんも出演していて、「私が関係していないことは辛さん側も認めている」と語っていた。ところが、長谷川さんは辛さんを反訴したが、これが棄却された。
スタジオに戻った山田社長は、「ニュース女子」は放送から1カ月で配信を差し替えるけれども、裁判の元となった「沖縄・高江ヘリパッド問題の『いま』」は4年近く動画をアップし続けていて、今も視聴できる状態にある、と話し出した。
「原告の訴えの中に動画の削除が含まれていましたが『消す必要がない』という結論が出ました。金銭的なこと、謝罪文を出せということには『不当判決』と我々は思っているんですが、まぁ、メディア業をやっている私どもとしては、作った番組を取り下げなくていい、ということで『まあまあ勝訴』かなぁと」
と嬉しそうな表情で語った。それを聞き須田伸一郎さん(60)が驚いた。今回の裁判は、当該動画によって起こされたものであり、それ以外は無い。名誉棄損が認められたら一刻も早い取り下げを命じられるのが普通。
「動画を配信し続けたら名誉棄損状態が続くことになる。となると、あの番組をもって、名誉棄損が成立しているというふうには、、、ちょっとね、判決文全文を読んでみないと、その趣旨はわからないんだけれども」
と語った。今後DHCテレビは控訴し、そして長谷川さんはもう一度辛さんへの訴訟を考えているという。
(リンク)
「虎ノ門ユース」(2021年9月1日放送)