トイレを示す「WC」。これは何かの略なのか、それともただのサイン(記号)なのか。ニュースサイトしらべぇが「なぜトイレは『WC』と略される?約3割が本当の意味を知らない…」という記事を2021年9月28日に配信し、「WC」はwater closet(ウォーター クローゼット)であり、直訳は「水洗の小部屋」と書いた。しかし実態は、「何の略か分からない」。現在のピクトグラムのように、トイレのイメージとして作られたサインである可能性が高い。
water closetの意味は日本でしか通じない
NNJニュースは2021年10月上旬に「WC」に関する調査を実施した。日本最大のトイレ関連メーカーTOTOに取材したところ、
「WCの成り立ちは分かりません。water closetは日本でしか通じないという話しもあります。詳しい事は日本トイレ協会さんか、日本トイレ研究所さんに聞いてみるのはいかがでしょうか」
と同社広報は提案した。日本トイレ協会に聞いてみたところ、
「当協会は公共トイレのあり方について考える団体でありまして『WC』の語源については専門分野外となり、協会として説明やコメントは控えさせて頂きます」
ということだった。日本トイレ研究所も、
「私共でWCについて特に調査したこともなく、一般的に言われていること以上にはわかりません」
との事だったが、「WC」に関する参考文献を紹介してくれた。それが講談社のブルーバックシリーズ「トイレットのなぜ?」(平田純一著、1996年3月19日発売)だった。
世界で「W」「W.C」「W.C.」の異なる表記
「トイレットのなぜ?」の167ページから始まるのが「トイレサイン」。来日外国人が多くなっている昨今、どんな国の人でも一目で分かるようなサインが、日本の公共トイレに必要だと書いている。晴海の東京国際見本市会場ではトイレを、日本語、英語、フランス語、中国語の4か国語で表示されている。それ以外の国の人たちはそこが何か分からない、というのだ。外国のトイレサインについて、
「トイレを探すのは容易ではない。英語のTOILET またはW.Cは世界各地で見かけるが、中にはWとしか記していなかったり、自国語でしか表示していなかったりする場所もある」
とした。そしてドイツ、アルゼンチン、タイ、モロッコ、タイなど様々なトイレサインの写真を掲載。中国の西安市内のトイレは「WC」、スペインマジョルカ島修道院のトイレに「W.C.」の表示があった。筆者は最後に、世界中の公共トイレは国際的なピクトグラムで統一することが望ましいが、色々な意見があるため時間がかかりそうだ、と結んでいる。この文献から分かることは、「WC」は世界各国で使われているが、統一されたものではなく、「W」「W.C」「W.C.」といった異なる表記がある。ということは、仮に何かの文字の略語だったとしてもそれぞれ意味が違う可能性が高い。つまり「WC」は、何かの文字を略したものだということは全然重要なことではなく、ストレートに「トイレだと分かるように作られたサイン」、または現在の「ピクトグラムのようなもの」、ということになる。
(リンク)
講談社BOOK倶楽部「トイレットのなぜ?」
https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000194075
日本トイレ協会
日本トイレ研究所