波浪警報が出てたのに航行したのは「船長から申し出があったから」。衛星電話故障などチェック漏れが多かったのは「船長を信頼していたから」。そして、「船長の言うことは全てOKにしていました」。

北海道知床半島の沖合で乗客乗員26人が乗った観光船「KAZU I(カズワン)」が消息を絶った事故で、運航会社「知床遊覧船」の桂田精一社長(58)が2022年4月27日に斜里町内のホテルで初めての記者会見を開いた。ところが、説明があやふやで、船長に全て責任を押し付けるような内容だった。記者団は2回目の記者会見を要求した。

豊田徳幸船長が「出航可能」と言ってきた

今回の最大のポイントは、4月23日は波浪警報が出ており、他社の観光船や漁船は出航しなかったのに、なぜ「カズワン」だけが海に出たのか。桂田社長は豊田徳幸船長(54)が「大丈夫」と言ってきたからとした。2人で相談し、自分も海を確認したが波も風も穏やかだった。それで出航を認めたと語った。春先は海が荒れやすい事も知っていた。その代わり、

「海が荒れるようであれば引き返す、条件付きの運航」

とした。これが記者から総ツッコミを受けることになる。豊田船長が語ったとされるのは、

「午後から天気が荒れる可能性があるが、午前10時からのクルーズは出航可能」

ところが、出航は午前10時からの3時間コース。海が荒れる時間には沖から遠く離れていて戻れなくなる可能性がある、という記者からの批判だ。桂田社長は、

「ある程度、出られると判断した」

と返した。その根拠は、出航に関する会社の安全管理規定。

「波が1m以下、風速8m以下、視界が300m以上ないと出航できない」

とあり、桂田社長が海を見た時は条件を満たしていたという。ところがこの数字、その「安全管理規定」に記載がなかった。「経験則」から導き出していたものだという。こうした数字は記載し管理局に提出すべきもの、と記者から言われると「知らない」とした。

「船長に全責任を押し付けている」と批判

桂田社長は「カズワン」の乗船客を見送った後、奥さんが出産した病院に行き、奥さんと子供を車に乗せて連れて帰った。事務所に戻ったのは午後4時前だ。「カズワン」にトラブルがあり、援助を求める通信があったのは午後1時18分。そして、「カズワン」は消息を絶つ。この救助を求める通信、受けたのは他社の無線機だった。なぜ「知床遊覧船」に連絡できなかったか。それは衛星電話が故障していたから。桂田社長はこうしたミスについて、

「観光船シーズンの始めのため、チェック漏れが多かった」

と説明した。なぜチェック漏れが多かったかといえば「船長を信頼し任せていたから」。普通なら3年ほど訓練を積んだ後に船長に抜擢するが、豊田船長を1年で抜擢したことは、

「(以前勤務していたベテラン船長が)豊田には素晴らしいセンスがある、という船長の意見を採用した」

とした。記者から、条件付きの航行でも「戻りにくい雰囲気があったのではないか」と問われると、

「そんなことはありません。船長の言うことは全てOKにしてました」

と答えたものだから、記者から、「船長に何もかも(事故の原因を)押し付けているように聞こえる」との批判が出た。そしてこの会見、桂田社長の説明が終始あやふや。全体的に記者らが呆れてしまう雰囲気が伝わるものだった。これでは記事にならないと、記者団は2度目の記者会見を要求した。

 

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「知床遊覧船」公式HP

https://www.shiretoko-kazu.com/