キンチョウ(KINCHO、大日本除虫菊株式会社)が2021年6月4日、全国の主要新聞に全面広告を掲載した。ネット広告を「あこぎ」とディスっていて、「いいよね、一方通行の新聞広告」と新聞広告を持ち上げている。
キンチョウの新聞広告といえばこれまで、文字が殆どない「読めない新聞広告」だったり、巨大なゴキブリが作れるよう、新聞紙自体を折り紙にするなど、新聞という機能を蔑ろにするようなものがあった。方針転換したのか?と思う人も出たのだが、実態は従来通りの路線だった。
新聞広告は「一方通行」でネットの監視はない
キンチョウの全面広告には、ネット広告が「あこぎ」な理由がいろいろ書かれている。まず、ネットで買い物をすれば個人情報が抜かれる心配があること。購入すればそれとは別の関連商品を買えと押し付けてくること。広告を見ただけで嗜好が分析され関連商品の広告が出てくること。広告を何秒間見たか、途中で離れたかが知られること。何時、何処で広告を見たかが分かってしまうこと、などだ。それに比べると新聞広告は「一方通行」であり、ネットの監視に縛られることなく、広告が楽しめる。キンチョウとしても「へぇ、こんな商品があるんだ。今度買ってみよう」と思ってもらえるだけで十分だ、と書いている。この広告を見て、ファッションセンター「しまむら」へのカウンターだと感じる人も出た。
キンチョウはわざわざ対立煽りをしている
というのも、しまむらは広告の主要媒体だった新聞折込みチラシを減らし、テレビCMは見送った。代わりに力を入れたのはネット広告。結果、広告宣伝費は2割強抑えられ、2021年4月5日発表の2月期連結決算では、 売上高が前期比4.0%増の5426億円、最終利益が同99.3%増の261億円となり4期ぶりの増収増益を果たした。そのためか、キンチョウの全面広告に対し、
「わざわざ対立煽りする〇〇企業」
「こいつらだってネットで収集されたビッグデータ使ってるだろうに」
「紙だろうがネットだろうが広告そのものがウザイ」
といった反応も出た。
ところが今回の広告、ネット広告をディスっているようだが、下の方まで見るとこんなことが書かれている。
「インターネット大好き」戦略に乗ってしまった
「詳しい製品情報は、ホームページでご覧ください」「ぜひ、ホームページへ」「デジタルキャンペーンやっています」。そしてアドレスと、キャンペーンに繋がるQRコードが載っている。キャンペーンページに行くと、
「インターネット大好きキンチョウからあなたのデジタルデバイスにうれしいプレゼント」
となっている。実はアドレスも「internet/daisuki」だった。
新聞広告を見てダイレクトにHPやキャンペーンサイトを訪れる人がどれほどいるか分からないが、このキンチョウの新聞広告は自社のネット広告への誘導目的に作られたもので、ネットで話題になればなるほど、キャンペーンサイトに人が呼べる、と考えられたものだ。またネットでは、キャンペーンページのHTML(ソースコード)を表示すると、キンチョウの大きなトレードマークが出てくることも話題になっている。
「まんまと戦略に乗ってしまいました」
「ぜったいウキウキで作ってたでしょwww」
「新聞広告~サイト誘導~ソースまで完璧って神がかってるなこの広告www」
といったことが掲示板に書き込まれている。
(リンク)
キンチョウの新聞広告一覧(キンチョウHP)