性行為での精子提供を十数回受けた30代の女性が妊娠した。二人はTwitterを通し知り合った。妊娠が成功し2人の「契約」は終わりのはずが、女性は、男性が国籍や学歴を偽り精神的苦痛を受けたとして、2021年12月27日に約3億3000万円の損害賠償を求め東京地裁に提訴した、との報道が東京新聞などであった。
一般的に精子ドナーは素性を秘密にする。将来的なトラブルを避けるためだ。それをなぜ女性は知ったのか。そして男性の言い分とは。
「京都大学卒」ではなく地方の国立大出身
実はこの女性、過去に朝日新聞など様々なメディアに登場し、男性が国籍や学歴を偽ったと告発している。訴訟に至る経緯はこんな具合だ。女性は夫と長男との3人暮らしで、もう一人子供が欲しいと不妊治療をした。しかし恵まれなかっため夫に内緒で精子ドナーを探し、Twitterで見つけた。性行為をする自然な形での精子提供を十数回受けた2019年夏、妊娠した。ところが、「京都大学卒」と女性は思っていたが男性は地方の国立大出身で、中国から留学してきた中国人ということが分かった。それが妊娠5か月目であり、中絶は難しいことで2020年2月に出産した。一般的に精子ドナーは素性を秘密にするのだが、なぜ女性は素性を知ることになるのか。
男性は一流企業で20代後半の「羽生結弦」似
「週刊女性 prime」は2020年5月20日、「SNS取引の危険、精子提供を『受けた女性』と『提供した男性』のドロドロ愛憎劇」を配信した。男性は20代後半でフギュアスケートの「羽生結弦」似と書いている。SNSを通じてのドナー探しではお互いの名前さえ教え合わないことを女性は知っていた。男性も下の名前しか明かさなかった。ところが社員証を使って下の名前を見せたのだという。誰もが知っている一流企業だった。6月に妊娠が分かるまで週に2、3回会った。ホテル代の総額15万円ほどは女性が払った。こうしたことを、女性の夫は知らされていなかった。妊娠しても疑われない理由があり、それは日常的に夫と「子供作り」をしていたから。本来なら妊娠によって2人の「契約」は終わり。ところが関係は続いていて11月頃に男性の態度が悪くなった。なぜそうなったのか女性には分からなかった。男性の社員証で勤務先を覚えていた女性は、社員寮に行き聞き込みを行った。そして調査会社を利用し、男性は京都大卒ではなく地方の国立大卒、国籍は中国で、妻帯者であることも分かった。
「彼には謝罪や説明を求めましたが、まともに取り合ってもらえず今に至っています」
と記事に書いている。では男性の言い分はどうなのか。
奥さんのFacebookにメッセージが送られた
記事では、お互いの個人情報を詮索しない約束だった、と男性は語っている。大学は「国立大学」としか答えていないし、国籍は聞かれていない。配偶者の有無については答えていない。6月に役割を終えたわけだが女性にしつこく誘われ関係は翌年の3月まで続いた。
「彼女は私に好意があります。LINEで、何度も妻と別れて結婚してほしい、と迫られています。何度も断っています」
とし、身体の関係を求められ「嫌です」と断ると、ネット上で男性を誹謗中傷するようになった。女性は奥さんのFacebookにまでメッセージを送ったため、自分のやってきたことが奥さんに知られた、という。女性が生んだ子供は現在、「ウソをつかれて生んだ」というのを理由に養護施設に預けられているそうだ。男性は記事で、
「万が一のときは、子どもの親権を主張する考えもありますし、妻にも承諾を得ています」
と述べている。
ドナーの匿名性が失われる心配で提供者が減少
人工授精(AID)を国内で最も多く行っていた慶応大学病院が2018年夏、提供を希望する夫婦の新規受け入れを中止した。従来はドナーの匿名性が担保されていたが、将来、「出自を知る権利」により公表される可能性が示された。そのため、提供を躊躇する人が増えたからだ。これは精子ドナーにも当てはまる。
精子提供は、性行為を自然な形で行う「タイミング方」、精液を先端がシリコンでできた注射器で膣内に入れる「シリンジ法」がある。ただし、産婦人科医など正式な施設で行う場合は既婚者のみが対象となる。SNSには「#精子提供」などのハッシュタグが数多く出ていて、違法ではないため、未婚のままシングルマザーを希望する女性ですら利用する例がある。ただしこれは危険が伴い、男性の健康面や病床履歴、経歴、名前住所が分からないまま行う。そして、シングルマザーを希望した独身女性の、
「全部お金を出してもらえる上、避妊具なしでセックスできる、都合の良い女になっていたんです」
という嘆きも報告されている。
(リンク)
東京新聞「精子取引トラブルで訴訟『京大卒独身日本人と信じたのに…経歴全部ウソ』精子提供者を女性が提訴 全国初か
https://www.tokyo-np.co.jp/article/151342
「週刊女性 prime」は2020年5月20日、「SNS取引の危険、精子提供を『受けた女性』と『提供した男性』のドロドロ愛憎劇」