Amazon書籍ベストセラー1位「夢をつかむ力」。徳島県の私立高校から現役でスタンフォード大学に合格した松本杏奈さん(19)の自叙伝だ。味方無し、お金無し、英語力無しの3つの逆境を乗り越えたというのだから、どんな「魔法」を使ったのか興味が湧くが、これが「捏造」であるといった報告が出た。 

松本さんはアンチからの激しい批判に晒され、Twitterアカウントの削除に追い込まれた。ところが、過去の松本さんの発言を見てみると、「味方無し、お金無し、英語力無し」は出版した KADOKAWA の煽り文句に過ぎず、それに松本さんは巻き込まれたというパターンのようだ。 

英語力無い人が米大学入試を受けるの? 

 ベストセラー「田舎からスタンフォード大学に合格した私が身につけた 夢をつかむ力」は2022年4月22日に出版された。松本さんバッシングは、翌日23日のAmazonレビューに投稿された「3つの逆境の謎」(現在は削除)が火を付けた。なんと1万2000字という長文。松本さんをよく知る人の投稿のようだ。そもそもカネがなく、英語ができない、後押しする人がいないのになぜ米国大学に合格できるのか、という疑問。その回答として「味方無し」は間違いで、高校の先生だけでなく塾の講師、さらに父親も応援していた。「お金無し」は20もの米国大学の受験費用が払える身分であり、在籍高校は小中高一貫の高偏差値私立学校。そして父親は東大医学部出身で、米国留学経験があり、大学の名誉教授だとした。「英語力無し」とはいうが、海外に2度語学留学し、塾にも通っている、などと説明した。書いていることがどこまで正しいのかは分からないが、ネットで検証が始まり、そして、「捏造」という判断で松本さんバッシングが起こった。ただし、ポイントは、本当に煽り文句の通りの書籍内容になっているのか、それとも、 松本さん自身が出版社の行き過ぎた煽り文句の被害に遭っているのか、という点だ。 

「徳島のスタンフォード合格女子の正体」 

 松本さんはスタンフォード大学に合格するまでの過程を、Twitterにドキュメンタリータッチで綴って来た。書籍はこれを元に書かれたものだ。そのtweetの中には高校1年のときに両親が離婚。母親と一緒に暮らしたが家出をし、高校3年のときに父親のもとに転がり込んだ、と明かしている。父親はとても尊敬できる人物なのだそうだ。 

東洋経済ONLINEは「徳島から『超名門スタンフォード合格』女子の正体」(2021年8月6日配信)の記事中に、松本さんのインタビューを掲載している。米国の大学を目指したのはノーベル賞受賞候補になりうる人材を育成する「アジアサイエンスキャンプ2019」(中国で開催)に参加したのがきっかけ。ただし、周囲の殆どから反対されたため、4つのプランを作り、落ちたら吉本興業の芸人を目指すというものを含め、反対する人たちを一人ひとりを説得した。自分を理解してくれる人も一定数いて、特に担任が力になってくれた。結局19校に出願し、6校に合格。13校は不合格になった。海外在住経験はなく英語は苦手だったが、それは中3までのこと。「 X Japan」の歌がきっかけで最終的に学年上位の成績を収めた。お金のことでは、都心の高校生が通う留学専門の受験塾には学費が高くて通えなかった。唯一頼ったのは、ウェブで海外の大学進学を無料で支援する団体「atelier basi」だった。また、柳井正財団から全額給付の奨学金も受けることが決まった、となっている。 

「出版社が著者を搾取するのみ。援助を怠っている」 

 実は松本さん、大まかにいえば、リケジョ(理系女子)の独り立ちを推進したい人物。「味方無し」というのは、具体的には「女は物理選択を止めたほうがいい」「体力の無い女子は理系選択をするな」に反発。「お金無し」は、自らNPO法人を立ち上げるなど、お金作りには様々な方法がある、というアドバイス。「英語力無し」は中学時代まで。そして学年上位まで登った方法と努力を紹介している。そうしたことがエッセイ「夢をつかむ力」に書かれているに過ぎない。 

ところが、この「味方無し、お金無し、英語力無し」のキャッチフレーズ、「スタンフォード大学に合格した」に繋がるわけだから、どんな「魔法」があったのかを読者は知りたいわけだ。その先にある「リケジョ(理系女子)の独り立ち」に繋がるなど想像できないのが普通だ。 KADOKAWA はそれを見越して煽り文句を付けたのか。それとも至らないだけだったのか。Amazonレビューには、 

「日本・徳島での泥臭い闘いのエピソードなので、装丁の印象とは乖離があるように感じられました」 

「『出版社が著者を搾取するのみでプロとしての適切な援助を怠っている』と言わざるを得ません」 

「鉄門出身の父親の協力を得てアメリカの私立にいっただけの話を、逆境エピソードに仕立て上げてるだけです」 

などといった、出版社や編集者の「戦略」の穴を問題視する投稿が散見される。 

 

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松本杏奈さんらが立ち上げた「全国高校生異分野融合型研究プログラム」(IHRP)  

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