今年の夏アニメで異彩を放つ「異世界おじさん」。人気が高く「夏アニメの覇権」という表現をする人もいるくらいだが、2022年8月上旬の放送に続き、9月も放送が中止となる。8月は3日と10日の2週連続で、1話と2話の再放送が行われ、9月はとうとう1ヶ月いっぱい中止。3~6話が再放送される。
中止の理由は8月に続き、スタッフの新型コロナ感染者が増えてしまったため、と「異世界おじさん製作委員会」は説明しているが、実は最初からスタッフが足りなかったらしい。
本当に新型コロナの蔓延が原因なの?
「異世界おじさん製作委員会」は9月2日、
「8月の2週間の放送休止を経て、放送を再開させていただいておりましたが、その後も感染の拡大を止めることができず、第8話以降の放送を一時休止させていただきます」
と発表した。9月丸々1カ月間休止になる。人気作品のためか「異世界おじさん」公式Twitterには、
「記憶消して見直します。皆様お大事になさって下さいね!」
「無理せず休んでください スタッフの健康・安全第一です 良作SEGAアニメなので」
といった励ましのリプが多数寄せられている。ただし、いくらコロナ禍といっても2か月間8話中、6話分が放送中止になるのは異常だ。実は、
「第7話放送前の時点で作画スタッフがゼロだった」
という報告がある。スタッフ間にコロナが蔓延していた、ということだけではなさそうだ。
「納品まで、あと3週。間に合うのか」
アニメーターの一居一平氏が8月28日、自身のTwitterでちょっとした暴露を行っている。一居氏は第10話の演出を依頼されていた。それについて、
「7話放映前でまだ作画スタッフがゼロということでやらないことになりました。非常に残念です。社内スタッフだけで進めるそうです」
ただし、演出はしないがコンテとダビングの制作には参加するのだという。10話の放送予定は9月21日。一居氏は翌日、
「納品まで、あと3週。スタッフ0 放映に間に合うのか(多分間に合うでしょう…)」
と投稿した。ところで、「作画スタッフがゼロ」「社内スタッフだけで進める」というのはどういう意味なのか?
下請け会社に丸投げ(グロス)できない
これはあくまで一般的な話であり、「異世界おじさん」の制作スタジオ「Atelier Pontdarc」がどうなのかは分からないが、深夜30分アニメをワンクール12話作る場合、1~4話まで元受け会社が制作し、5~6話はグロス、7~8話が元受け会社、9~10話がグロス、11~12話が元受け会社が制作する。この「グロス」というのは元受け会社が下請け会社(外注)に制作を丸投げするという意味だ。だから「作画スタッフがゼロ」というのは、このグロス回である可能性がある。ではなぜグロスできなかったのか。一居氏は9月2日、Twitterで、
「進行が一人しか居なかったので外注に回すのが物理的に難しかったのだと思います」
と説明した。
アニメ制作の「進行」というお仕事
「進行」というのは「アニメの制作進行」という意味で、進行はアニメ制作のスケジュールの調整や、アニメーターの管理とアニメーターと制作会社を繋げる役割を担う。一般的に制作チームには進行を3~6人置くが、2人だったら忙しすぎて「地獄」とされる。仮に一居氏の言う「1人」が本当だったならば、こなせる仕事量が非常に少なくなり「外注(グロス)に回すのが物理的に難しかった」と、外部交渉の成立ができない、という事になりかねない。グロスができないのであれば、「Atelier Pontdarc」社内で完結するしかない。一居氏の言う、
「社内スタッフだけで進めるそうです」
となってしまう。9月いっぱい「異世界おじさん」の新作が放送されない訳だから、納期は1カ月延びる。一居氏は「納品まで、あと3週」と8月29日に投稿していたが、9月2日、Twitterで、
「あと7週」
と変更している。
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(リンク)
一居一平氏Twitter「7話放映前でまだ作画スタッフがゼロ」
https://twitter.com/IchiiIppei/status/1565573031690285056
異世界おじさん製作委員会公式HP
https://isekaiojisan.com/news/index00640000.html
異世界おじさん公式Twitter